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【スピード指数の創始者】アンドリュー・ベイヤーのトリップ・ハンディキャッピング

いまや日本の競馬でも予想に欠かすことができなくなった【スピード指数】はだれが元祖か詳細は知りませんが、アンドリュー・ベイヤーこそがその創始者であるといって怒られることはないはずです。

彼のトリップ・ハンディキャッピングは平たく言えば、同じ条件で勝負したらどの馬が強いかがただちにわかるようになる指標と言い換えてもあながち間違いではないでしょう。もちろんレースでは格もあり、血統もあり、枠番もあり、馬場もあり、騎手もいて、さまざまな条件がレースごとに変わるわけですが、大事なお金を賭けるときに同じ条件ならどの馬が勝つのか、すなわち「勝ち馬を探す」際にはベイヤーのトリップ・ハンディキャッピングが馬券予想に革命をもたらしたことは疑いようがありません。

そのノウハウを余すことなく紹介したのが前著「勝ち馬を探せ」とその続編となる本書『ウイニング・ホースプレイヤー』ということになります。原著は1983年で翻訳出版は1992年。10年近くたってやっと本場の競馬予想の革命時の予想ノウハウが読めるようになったというわけです。

現在は格や血統、前走のコース取り、枠番馬番などなどが各紙によって少しずつ違った要素が加味された結果としてのスピード指数が予想紙に提示されるわけですが、結論が出るまにどのような要素が加味されるのか、ある予想紙が加味しているスピード指数の中身はいかなるものか、本書を読むとその一端がわかります。

ここではアンドリュー・ベイヤー著/山本尊訳『ウイニング・ホースプレイヤー』よりいくつかのトピックを紹介したいと思います。ぜひ一度手に取って読んでみてください。

ベスト・セラー「勝ち馬を探せ!!」の”プロフェッサー”ベイヤーが、
スピード・インデックスに続いて提示する新理論。
競馬を”科学する”全ての本格派競馬ファンへ、
A・ベイヤーが贈る勝利へのニュー・アプローチ、トリップ・ハンディキャッピングを紹介。

アンドリュー・ベイヤー著/山本尊訳『ウイニング・ホースプレイヤー』とは?

『ウイニング・ホースプレイヤー』は、“Andrew Beyer, The Winning Horseplayer : A revolutionary approach to thoroughbred handicapping and betting, Houghton Mifflin Co., 1983”の全訳である。
本書は、同じアンドリュー・ベイヤーの著書である『勝ち馬を探せ!』(メタモル出版)の、 いわば続編的存在と言ってもよい。ただ、『勝ち馬を探せ!』が、ベイヤー自身が考案したスピード指数を、実際にどう用いるのかをテーマにしていたのに対し、本書では、スピード指数では解決できなかった問題を扱う方法について論じられている。
この方法を、ベイヤーはトリップ・ハンディキャッピングと呼んでいる。トリップは本来、「旅行」という意味だが、競馬用語としてのトリップは、サラブレッドがレースの際、コースをまわってくる様のことだ。道中、その馬はペースを守って走ったのか、他馬から不利を受けなかったか、砂が深いところや芝が荒れているところを通ったため、バテたのではないか、そんなことをレース中しっかりと見定め、次走の手ががりにしようとするのが、トリップ・ハンディキャッピングだ。
「そんなことは誰だってやっている」と考えられる方もいるだろう。だが、ベイヤーも演劇にたとえて言っているように、トリップ・ハンディキャッパーは主役から端役まですべての登場人物に注意を向け、本当に強いレースをしたのはどの馬なのか見極めようとする。ベイヤー自身は、各馬のトリップを見ることで、近走、高いスピード指数の馬でも消すことのできるケ ースがわかるようになり、コースどりによってはスピード指数が無意味になる状況も把握できるようになったようだ。
「勝ち馬を探せ!」「ウイニング・ホースプレイヤー」などで
競馬推理を科学に高めた著者が提示する新たな推理のモード。
本格的競馬ファンに贈る競馬推理テクストの最先端。

アンドリュー・ベイヤー著/山本尊訳『ウイニング・ホースプレイヤー』より

ハーネス・レースをやるようになると、コースどりで損をしているかどうかに注意を払わなければならないことがわかる。だが、競馬の中距離戦だと、第1コーナーでロスをする問題性は案外、気づかれてはいない。ぼく自身、この点に関してはハイアリアでのある出来事まで気づかなかった。
その競馬場は一周1800m。そのシーズンから1700m戦も行なわれることになったのだが、スタート地点はちょうど最初のコーナーの入口のところにおかざるをえない。外枠から発走する馬は常に外側に振られてしまい、勝つことはできなくなる。1シーズンほどで、騎手は外枠に当たれば、スタートして馬を下げ、ラチ沿いに進路を変えるか、それとも全速力で内に切れ込み、インコースをとるかしなければ仕方がないとわかってきた。だが、騎手がもし何もしないでそのまま走らせば、もう敗北は目に見えているのだ。

コーナーでのロスは数字で表わすことができる。内ラチからずっと3m離れている馬だと1周1600mのコースでは6馬身余分に走ることになる。陸上競技のセパレート・コースのようにコースにも線を引いたとして、1頭分の幅を約1m、長さを2.4m~2.7mとすると、そのセパレート・コースではコースがひとつずつ外になるごとにカーブひとつにつき、1馬身ずつロスをすることになる。もしラチ沿いに走れば、もちろん可能な限りの最短コースを通ったことになる。
このロスをもっと正確に計算しようとしたホースプレイヤーもいる。スピード・ハンディキャッパーのレン・ラゴツィンが内ラチからどれだけ離れて走ったかもタイムの指数化に入れようとしたくらいだ。ただ、ぼくはここまでやるのはやりすぎで、また当てにもできないと思っている。それは、例えば内ラチから3m離れて走った場合の影響は、競馬場ごとに異なってくるからだ。ベルモント・パークのような広いコースの緩やかなコーナーではそう大きな不利にはならないだろう。

だが、チモニウムのような1周800mの小回りコースでは、決定的なダメージだ。だから、コーナーで外を回った際の影響は競馬場の特性と関わっている。もし、コースの内側の砂が深いなら、内ラチから3頭目くらいのところを走るのが最もいいコースどりになるかもしれない。
こうした複雑な計算をする代わりに、ぼくは単純にコーナーでの位置とどれほどロスしたのかを書いておく。もし、最初のコーナーで内から”2番目”のコースだったなら、“2FT”(FTはFirstTurnの略)と書くだろう。また、ハイアリアで最初のコーナーで大きく外を回ったなら、”7FT”と書くかもしれない。レースの最初にこれほどのロスがあると、普通は勝てないものだ。

芝でのレースだからといって特にコーナーについて別の考え方をすることはない。ただ、芝でのレースでは2つのコーナーで勝敗が決まると言ってもいい。というのも芝ではコーナーがきつく(*)、もし外を回ると抑えがつかずにもっと振られてしまい、致命的なロスになる。
この点で芝のレースはハーネス・レースに似ており、トリップ・ハンディキャッパーはとりわけ芝のレースを好むものだ。
日本と異なり、アメリカは内側が芝コース、外側がダート・コースなので、
芝コースの方が当然のことながらコーナーがきつい。

アンドリュー・ベイヤー創始のトリップ・ハンディキャッピングは、とりわけ狭い地方競馬に当てはまる法則であることは明らかでしょう。ベイヤーのこうした考え方がのちに広まり、スピード指数なるものに変換されて予想紙に使われるようになったと思います。

大井競馬場公認予想「ゲート・イン」主宰の吉冨隆安さんの『実走着差理論』はベイヤーの日本版といえるかもしれませんね。

吉冨さんの著書「実走着差」に【理論編】と【実践編】があるように理屈がわかっても、実際の馬券的中するためには消化して昇華しなければなりません。

トリップ・ハンディキャッピングまたは実走着差の理論を体得したうえで、実践はぜひBAOO博多でやってください。全席指定の完全に自分の空間で没頭していただきたい。皆様のご来場をお待ちしております。