競馬ファンならぜひ読んでほしい短編を1つ紹介します。短編なので20分もあれば読み切れる小説です。
私に10分だけ時間を下さいませんか?ってセリフいうドラマありましたよね? それね!

作者は、織田 作之助(おだ さくのすけ、1913年(大正2年)10月26日 – 1947年(昭和22年)1月10日)。戦後、太宰治、坂口安吾、石川淳らと共に無頼派、新戯作派と呼ばれ「織田作(おださく)」の愛称で親しまれたとか。代表作は『夫婦善哉』。
題名はズバリ「競馬」です。
読んでて、落語で有名な「紺屋高尾」をふと思い出したりもしましたど、織田作之助の「競馬」は人間のどうしようもない性というか、業というのか、どうしようもねえなあってところをズバズバ書いてて、辛いような、自分を鏡で見ているような気にさせてくれます。
文中でも出てくるんですが、【人々はもはや耳かきですくうほどの理性すら無くしてしまい、場内を黒く走る風にふと寒々と吹かれて右往左往する表情は、何か狂気じみていた】とか好きですなあ。
朝からどんより曇っていたが、雨にはならず、低い雲が陰気に垂れた競馬場を黒い秋風が黒く走っていた。
午後になると急に暗さが増して行った。しぜん人も馬も重苦しい気持に沈んでしまいそうだったが、しかしふと通り魔が過ぎ去った跡のような虚しい慌しさにせき立てられるのは、こんな日は競走が荒れて大穴が出るからだろうか。
とか
そんなレースが続くと、もう誰もかれも得体の知れぬ魔に憑かれたように馬券の買い方が乱れて来る。
前の晩自宅で血統や調教タイムを綿密に調べ、出遅や落馬癖の有無、騎手の上手下手、距離の適不適まで勘定に入れて、これならば絶対確実だと出馬表に赤鉛筆で印をつけて来たものも、場内を乱れ飛ぶニュースを耳にすると、途端に惑わされて印もつけて来なかったようなへんてこな馬を買ってしまう。
なんかの記述もいいねえ。レース展開を書いているところなんて映像を見ているように思い浮かべられて滅法うまいしね。
能書きはそれくらいにして、それでは私に20分だけください。
クリックして青空文庫で織田作之助の「競馬」を読んでみてください。どうぞ!
もし読んでおもしろいって思った人は私と気が合うってことですな。

初出は「改造」[1946(昭和21)年]。
「ちくま日本文学全集 織田作之助」[筑摩書房、1993(平成5)年]に収録。
2人の男と1人の女の「嫉妬」をテーマにした作品。一人の人間が生きることで感じる息苦しさが描写されている。